英国でポスドクをして大学教員になった若手研究者のブログ

ポスドクの研究留学日記的なブログ

2013年2月10日日曜日

ベートーベン ピアノソナタ 第十八番

こんにちは。先週は温かかったのに今週は寒い。そんな日々でした。昨日は1980年製の赤ワインをごちそうになり、大満足の時を過ごしました。生まれて初めて赤ワインを心から美味しいと思いました。赤というよりは紫+茶色に近い赤ワインでしたが。しかし、驚くほどマイルドでビックリでした。
研究も順調と言いたい所ですが、そうも行かず。昨日は机に張り付いてデータとにらめっこして終わりました。 しかしその結果、とんでもない反応が起こっているんじゃないか、ということに気がつき、赤ワインの味をよりいっそう美味しくさせてくれました。水酸基を保護するだけなのに、予想だにしない化合物を得る結果になった模様です。まったく目指す物とは違う化合物なので落胆もしますが、あまりにamazingなので改めて有機合成の面白さに触れた感じがしました。研究プロジェクトからしたら無駄な作業ですが、この「いらない物」の決定にもう少し時間をかけてみようと思います。研究なので詳しく述べられませんが。。。

最近のお気に入りは木を見ること。よく見るとデカイってことに気づく。

この木もお気に入り。

さて、私。何回も書いてくどいですが、クラシックが大好きです。最近は表題にあるとおり、ベートーベンピアノソナタ第十八番がお気に入りです。「狩」と呼ばれることも多いみたいですね。ベートーベンと言えば、悲愴、月光、熱情の3大ピアノソナタだったり、その他7大ソナタが有名ですが、それには含まれないややマイナーな曲です。

この曲をきちんと聴いたのはそんなに昔ではありません。初めて聞いた頃に、その良さはそんなに理解できませんでしたが、こちらに渡ってから急に虜になりました。音楽って不思議ですね。っていうか音楽が変わるわけ無いので、きっと私が変化したのでしょう。

この曲、出だしのやや悲しげに聞こえる音がすぐに心をとらえます。第一楽章全体としては軽やかな感じがするのですが、部分部分に響く悲しげな寂しげな音が良い感じです。その音が非常に効果的に配置されている感じがします。なので全体の軽やかさの中にきちんとその音が印象的に残るんだと思います。第二楽章はやたらと速いテンポで弾いているピアニストもいるのですが、私はそんなに速くない方が好きです。左手低音の刻むメロディとそれと調和する右手のメロディが印象的で、ベートーベンらしさを感じます。また所々に出てくるスフォルツァンドに彼の持ち味的な激しさが垣間見れ、格好良いです。特に和音じゃなくて単音で表現されている部分は芯が通ってる気持ちよさがあります。
 問題だったのは第三楽章。初めはあれ?って感じでした。イマイチわからん、、、という。そんな時は、その部分だけ聞いてみるのです。何度も何度も。好きな部分だけ聞くことは多いですが、いつの間にか好きじゃ無い楽章の再生回数が半分以下、なんてことも多いですよね。私の場合、好きとなるとやはり全体を理解したい。なので、ずーーーっと何回もこの第三楽章を聴きました。
するとどうでしょう。今ではしっくり来ます。完全に理解とかは100年早いと思いますが、ああいいな、と思います。たまに出てくるベートーベンの甘さ。第一第二楽章からはちょっと離れた位置取りをしている感じがするのですが、その辺を深く考えずに何回もそれだけ聴くと、なんとなく、言葉にするのが難しいですが、なんとなく頭に染みついてきます。特に印象に残りやすいメロディでもなく、相変わらずベートーベンらしい静と動の対比は見られ、そして時々甘い。なのに全体的にちょっとぼわーっとして終わる。
 正直あまり整理されていない印象がする第三楽章なのですが、なんとなくそれが理解できる気がします。と言うのも、きっとこの調べはベートーベンの内面の描写なのだろうな、と思うのです。人間自分がどういう気持ちでどう考えているのかなんて毎日毎日解っている人なんていないでしょう。時々めちゃくちゃに激しくぐしゃぐしゃな時もありますし、すっきりはっきりしている場合もありますし、なんとなくトロトロしてふわふわしながら軽く鬱々とする時もあります。個人的には、そういう穏やかながらも少し迷いのある精神を感じます。
第四楽章は楽しいですね。ええ、楽しいです。はつらつした感じで気持ちよいですね。あえて言葉にしなくても、聞いた人は好きだって言ってくれると思います。ベートーベンのピアノソナタでこの曲よりも楽しく、軽やかで、ルンルン的な感じの曲って無いんじゃ無いでしょうか。私的には彼が普段は見せないお茶目さを見た感じがして、ニコってします。

さて、全体としての印象は。「凛々しい」。これにつきます。あえてこの言葉を使わずに印象を書いてきましたが、この曲は彼の凛々しさ満載の曲だと思います。ピアノソナタ13番からこの18番までは、暑苦しすぎず、初期の頃のモーツァルト的な要素が強い訳でもなく、バランスが取れていると思います。私が想像するに、きっと彼は耳が聞こえないことを少し忘れていたのかもな、とも思います。健康な感じがします。笑
専門的な知識は皆無なのでこうやって感想を述べるのは恥ずかしいことなのですが、特にこの18番は凛々しさmaxで淡白すぎず、そして格好良く、ベートーベンらしさもあり、彼の優しさとか甘さも感じられ、好きです、と言い切ってしまいたいです。笑

昔はもうそれこそ、超有名どころの悲愴月光熱情が好きで、子供の頃は母親の車でそれがかかっていたら聞き終わるまで車を降りないとか、そんな感じでしたが、今は月光熱情ワルトシュタインあたりは、ぐお〜っていう感じがして、あっっっっつい!って感じがします。あ、でも好きですよ。ただ今は18番の虜になっているのです。

実はこの曲、私の母も弾いた曲です。いつも思うのですが、母はこの曲をどう感じてどう弾いたのか、とても興味があります。女性と男性の私できっと感性も違うと思います。私はもうピアノは弾けないので、母に弾いてもらいたいものですね。昔の音源とかあればもっと嬉しいですね。

この曲のお気に入りピアニストはクラウディオ・アラウです。激しすぎず、軽すぎず、凛々しさを表現してくれていると思います。残念ながらyoutubeでは見つからないのですが、CDで聴いて共感してくれる人がいると嬉しいです。

さて、帰国時にこの曲に対する思い入れを母に話した所、なんとその答えが
「年取ったね」でした。爆
はは、でしょうな。笑 そういう年です。でもエネルギーはまだまだありますがね。
ふはは。
最近お気に入りのベンチ。特に何をするわけでもない。

あっっっっつく燃えて全力入魂するのも好きですが、男性的な意味でelegantに、凛々しくスマートに、そんなのも最近好きになりました。この曲の影響です。
ベートーベンから凛々しさ(と少しだけ甘さ)を教えてもらっています。
 
old man Yskでした。それではまた。