英国でポスドクをして大学教員になった若手研究者のブログ

ポスドクの研究留学日記的なブログ

2016年5月11日水曜日

交差点・融合

ご無沙汰しています。Yskです。
昨日寝る前に読んで考え込んでしまいました。
こういう時は書かないとダメですね。笑
興味がある人は読んで見てください。


頷ける部分もありますが、大きな間違いだと思う部分もあります。東大副学長と言う大変お偉い方ではあり恐縮ですが、文が理を司ると言う、この国が近代国家となった明治以来の伝統的文化的視点から脱却できていないと思います。
(これについては参考に本を紹介します。Yskに衝撃を与えた書籍。)
(理系白書)


この記事中で先生は理系は技術革新のみできて、概念の革新はできない。それできるのが文系と言う。
これは明らかに間違いです。正解は概念の革新は誰にでもできる。一生懸命考えれば誰にでもチャンスがある。ということではないでしょうか。
ここで挙げられた例の解釈にも全く頷けません。SONYがAppleになれなかった理由は、概念を変えることができる長期的な価値軸の変化を捉える文系的な知が文理横断的にあったから、だと言う。
率直に言って意図する所がハッキリと掴めません。しかしAppleが成功した理由は極めて単純明快で、ジョブズに創造性と技術革新があり、その上自分で経営もできたからです。(元々ジョブズを始めAppleの創始者の多くはエンジニアですし。) 裏を返せば、SONYには経営者側に技術の視点から創造する能力が無かったとも言えるでしょう。しかし、僕としてはSONYも十分に音楽鑑賞の概念を変えて大成功したと思いますが。

思うに、僕ら科学者技術者は技術革新の先に何があるのかを考えるのが仕事です。そうやって日頃から考えを巡らし、研究費を得るための書類作りに勤しんでいます。単なる技術革新ではほとんどの場合、研究費を得られません。(税金ですから。。。)その上で技術の先の「概念の革新」が出来ないとは、、、失礼でしょう?笑
しかしこれが日本の伝統的な文高理低の視点に立った言い分なのです。そしてそう思ってる日本人が多いのは事実なのです。これが日本の高等教育の結果なのです。
(気になる人は先ほどの理系白書を参考にしてください。)

Appleを成功例と言うのなら、日本社会には科学技術を理解してその視点から未来を想像できる(ジョブズ的に言うなら交差点に立てる)経営者が極めて少ない事を憂うべきだと思います。

科学者や技術者はその革新によって概念を変える芽を生みます。その芽はコストやマーケットやニーズと言ったふるいにかけられ、伸びたりしおれたり枯れたりします。そして万に一つの芽が木、さらには大樹になることを許されるのです。ですから、むしろ育てる側(マネジメント側)が技術革新の視点から未来を想像できるかの方にかかっているのではないでしょうか。そしてその全てを兼ね揃えて、しかも自分で全部やってしまったのがジョブズ、Appleなのだと思います。

高度経済成長期やバブル期のごとく、経済学や経営学、政治や法律で企業を導いて行こうと言う時代は、とうの昔に過ぎ去ってしまったのです。その視点に立って大学改革・高等教育改革を論じて欲しいと思います。Ysk個人が考えるに、文高理低はやはり問題であるのですが、現状を打破するには理系の人間が目の前の研究技術開発だけにとらわれないような視点や思考を身に付ける努力をするのはもちろん、逆に文系の人間は科学を積極的に学び理解することがもはや前提となるくらいの努力をする必要があると思います。言語能力を含めたコミュニケーション力が注目されることが多い昨今ですが、それらの能力はあくまで基礎知識・学力・技術力という土台の上で論じられるべきです。現在はその土台が抜けてしまっているので、何ともフワフワした議論が続いていると思います。ですから、なおいっそう、真の高等教育の在り方が問われているのだと思います。

そして、やっと本題ですが。笑
文系学部が大学に必要か?って??
必要に決まってるじゃないですか。笑  むしろ全部の主要大学に芸術学部と音楽学部を置いて欲しいくらいですよ。あと、体育学部も。いわゆるテスト勉強ができる「優秀な」人がどう逆立ちしたって勝てない領域の人も隣にいる大学って、すこぶる魅力的だと思いますが。
テストで点数が取れるとか偏差値とかはあくまで一つのものさしであり、その世界に生きていない人間が身近に大勢いるという大学の環境は、大変素晴らしいと思います。これは偏差値偏重の是正、多種多様な人間の育成、学歴社会の改善、その延長線上にある格差の是正、寛容な社会、などなど。考えが甘いかもしれませんが、良い事の方が圧倒的に多い様に思えます。


ええ、つまり、まずは文系理系と分けるのやめましょうって言うことで、今日紹介した記事の後半は至極納得の内容になっていると、思うわけです。それが高等教育改革の第一歩ではないでしょうか。

さ、寝よう。

Yskでした!

追伸
Yskはジョブズは本当に凄い人だと思います。技術者であり経営者である。
彼の言う「交差点」。本当に好きです。