英国でポスドクをして大学教員になった若手研究者のブログ

ポスドクの研究留学日記的なブログ

2012年12月2日日曜日

海外学振。そして・・・

この話は海外に出ているポスドクにとっては避けられない話なのではないでしょうか。ポスドクに行くに当たって、給料がどこからもらえるのかは死活問題です。まず海外に出る足がかりとして、この日本学術振興会(JSPS)の海外学振に申請する人がほとんどだと思います。まずは海外学振でお金を得て、それで海外に出る。その任期が終了したらBossに雇ってもらって長く居続けるか、他の海外のポストを見つけるか、日本に帰るか。 おおまかにそんな感じだと思います。

私の場合はDC2→1年任期余り→PD切り換え→海外渡航届け(max1年が上限)という形で、ちょっと特殊なのですが。いずれにしても海外に出ていく時には海外学振を申請する人がほとんどです。というのも、給料として与えてくれる資金がとてつもなく良いからです。1つの国の機関として、ここまで潤沢な渡航費を出してくれる機関は世界中を見ても希だと思います。各国がお金を出し合う国際的な機関には海外学振に匹敵する内容のものがありますけどね。でも日本からだと、いきなりそのフェローシップに申し込む人ってすごく少ない気がします。すみません、私は化学系なもので生物系の人が多く応募するヒューマンフロンティアサイエンスプログラムやエンボフェローなどに日本人が初めから申し込むのかどうかはちょっと知りませんが。。。ま、化学系では完全に海外学振が筆頭に来ます。で、その海外学振が一体何者なのか知りたい一般の方のためにリンクを張っておきます。
http://www.jsps.go.jp/j-ab/index.html

で、当たり前ですけど、この海外学振、申請したら「はいどーぞ」という訳ではないです。10枚くらいの申請書を作成して提出します。主に今までの業績集やこれからの研究内容の計画についてです。それから海外で研究する意義なんかも書きます。で、偉い先生方に審査していただくわけです。採用率はだいたい15~20%くらいです。去年はなぜかすごい高かった(25%)ですが、異例だと思います。

私個人的な意見としては、たぶんこの海外学振が学振の中でも最難関だと思います。採用率は国内ポスドクのPDの方が低いので、数字上はPDの方が難しいように思われますが、まぁ個人的な意見です。というのも、この海外学振の場合、日本国内で既に学生を指導している若い先生方も応募するんです。助教のポストに就いていて、そこから国内のポスドクに戻るという人は0%に近いんじゃないかと思います。助教から次のステップだと、准教授、または海外に出る(海外学振に応募する)、そんな感じだと思います。
助教の先生はまさに先生ですから学生を指導して研究成果も出して、と私みたいな1人のポスドクより成果を上げやすいのは当たり前です。 そんな人がゴロゴロといるところに応募するんですから、私が最難関と言うのも間違いではないと思います。

ということで、私みたいな若手の研究者からすると、海外学振ゲットした人はエース級の扱いです。すげー、、、みたいな。「私、できる人です」みたいなレッテルを日本学術振興会から張ってもらえるんですから羨ましいものです。

で、私、もちろん今年の春に申請しました。こちらに来る直前に。私の任期は1年なので、来年の給料をくれるところを探さなければならないわけです。見つからなかったら、Bossに哀願して雇ってもらうかビザが切れるまで自腹滞在というオチです(笑
で、夏にこちらのブログにちらっと書きましたが、「書類審査不合格」だった訳です。
いやー、あのときはロンドン五輪真っ最中でしたが、凹みましたね。お先真っ暗状態でしたよ。ははは。

さて、DC1やDC2、PDや海外学振について「こうすれば通る!」みたいな情報はネットを使って調べればいくらでも出てきます。これでもか、というくらい丁寧に細かに書いてくれている親切なまとめページもあります。読むと「ここまで気にしなければいけないのか。。。」と思ってしまうくらい(笑

私の場合はこれで1勝1敗です。ネットでは「こうした方が良い」というアドバイスが多いですが、私は逆になぜダメだったかを反省しておこうと思います。

私の場合、不採用で評価Aでした。Aというのは落ちた人の中で上位20%ということです。惜しいじゃないか!もう少しじゃん!ということです。
私が他の人と比べて勝る所は・・・・まぁ書かないでおきます。単なる自慢ですから(笑。それよりこれを読んでくれる人が欲しい情報はなぜ落ちたか、だと思います。

端的に、発表論文数と申請書の内容だと思います。前者はもうどうしようもありません。助教の先生とかだと発表論文10以上なんて当たり前だし、人によっては20以上ってことも。私なんて到底及びません。3報ですから。。。目に見えて少ないですね。がっくり。
DC2なども発表論文数がすごく重要と聞きますが、私の場合や私の周りの仲間の状況を見ていると、そうでもないのが実際だと思います。DC2を発表論文0報で通った仲間もいるくらいですから(笑 ちなみに私は1報。1報で通った人、もう1人知っています。2報の人も。ね、少なくても通るでしょ。論文数が少なくても勝算はアリです。DC1やDC2はね。

 しかし、海外学振はダメですね(苦笑。私の印象では。さすがにある程度の論文数が必用だと思います。そう思うのにはもう一つ理由があります。私のハウスメートと比べてです。彼は通りました。(おめでとう!!)同じ領域に申請。同じ大学から。そして同じ大学(Oxford)に。非常に良い比較対象です。(つまり完全に私は彼に負けたわけだ!)彼と比べて明らかに私の劣る部分は論文数です。この強烈な数字の違いはどうしようもないのでしょう。確か彼は5報か6報だったと思います。うーんすごい。ここから見るに3報じゃ足りない。5報くらいあれば良いってことでしょうか。たった2つの違いですけど、研究者の世界では論文1つ発表するのにとてつもないエネルギーと時間を要します。この差は非常に大きいのです。絶対そうだと信じられてしまうと困るのですが、あくまで1つの指標としては良い比較だと思います。
(ちなみに彼は、僕が落ちた時に非常に同情してくれて、食事をおごってくれました。なんて優しい奴なんでしょう^^)

それから、申請書の内容。これは今になって思います。良くない部分がありましたね。はっきり言って、研究業績の書き方なんてどう書いても伝わる内容はさほど変わりないと思います。書く内容が大切なのは研究計画と海外で研究する意義の項目だと思います。私が提出するときは正直「業績で決まっちゃうんだろ」って思っていたので、そこまで突き詰めて考えませんでした。が、今思うと大切な項目です。
私が思う反省点は以下の通りです。
1つ。自分のバックグラウンドとこれからの研究計画がマッチしていることを十分に示せていない。研究計画や内容に関して自分のバックグラウンドを活かせるという表現が弱い。やはり、「ただやります。なんか難しそうだし。チャレンジングな内容だし。」だけでは弱い。
2つ。逆に無理矢理に今までの研究内容をひっぱり過ぎるのも良くない。海外に行って違う研究グループに属するのだから当たり前だと思います。研究内容は大きく変わってしまうのが普通だと思います。大きく変わっちゃって、それに関して自分の知識や技術をどう活かすのか、という書き方が求められていたのだと反省します。 せっかく海外に行くのに、日本でやってきた事とほとんど変わらない内容をやるんじゃ、「本当に行く意味あるのか?」って感じになっちゃうなと思いますし、私はこれをやってしまったと思います。
3つ。海外に行く意義はどこにあるのか。突き詰めて考えるべし。この理由は人それぞれだとは思いますが、私はちょっと甘かったと思います。正直、「苦手で大っ嫌いな英語を勉強しに行きます(泣」的な感情が大きかったので、それがつい出てしまったかと。。。少し違った領域に進出して自分の知識の幅を広げ、新しい技術も身につけ、それを日本に持ち帰って成熟させる。日本から持って行く知識や技術は海外のグループにも与えて、そちらで良い様に使ってもらう。そうして中身の濃い国際交流が可能になり、将来的にも親密な学術交流を継続する礎ができる。などなど、そこまで踏み込んだ考えを持って申請書を書くべきだったと思います。反省。

細かな所はまだありますが、大まかにはこの部分は良くない部分だったかなと思います。もちろん、それが改善されていれば絶対通ったとは言えませんが、あくまで個人の反省としてはそうだと思います。これを読んでくれた人の参考になるのかは不確かですが、一つの例として見てくれればと思います。

さて、何でこう反省ができたか、ということですが。それはまさに「落ちた」からです。お陰様でそれからが大変でしたが。ヨーロッパのフェローシップに応募したり(申請書が英語!!泣)、日本の別の財団に応募したり、と大変な日々を送っていました。だいぶ前ですが。その過程でわかったんです。あー、プロポーザルってこういう物なんだって。特にこちらのヨーロッパのやつは凄かったですね。約30枚も書きましたから。。。でも、何について書くべきなのか、しっかり理解できたので良い経験でした。この経験は研究そのものの経験よりも大きいんじゃないかと今では思っています。

さて、その新たなプロポーザル。それは、上原記念生命科学財団リサーチフェローシップとMarie Curie International Incoming Fellowshipです。
これらについては、結果が来たらそのうち書きます。
それではm(_ _)m

0 件のコメント:

コメントを投稿