英国でポスドクをして大学教員になった若手研究者のブログ

ポスドクの研究留学日記的なブログ

2012年10月15日月曜日

Brother

こんにちは。こちらはもう冬の気配です。木々の葉の一部は赤く染まりはじめ、朝の気温は3℃近くと。温かい服無しには生きてゆけません。さっむ〜・・・

さて、日本ですとこの季節は特に何があるという訳ではないですが、こちらは9月の末から10月半ばにかけては出会いと別れの季節です。新しい卒論学生、博士学生が来ました。新しいポスドクも来ました。そして4人の博士学生が修了しました。何となく寂しさがあります。
中でも寂しいのが、私の研究パートナーが出て行ってしまったことです。彼はスウェーデン人ですが、英語は完璧で、最も親切にしてくれました。私がこちらに来ると決まった時から色々と助けてくれて、実験関係も基本事項を全て教えてくれました。毎日彼と、chemistryのこと、たわいもない日々の出来事、冗談等々、一番良く話しましたね。特に私が一番感謝していたことは、彼は本当に忍耐強く私のつたない英語を理解しようとしてくれたことです。仕方のないことですが、私の英語は伝わらないことが多々あります。聞き取れないこともまだまだたくさんあります。皆さんそれぞれ努力してくれるのですが、それでも解らないこと、お互いに落胆します。彼らが悪いのではなく、私の英語力不足のせいなのですが、それでも落胆の溜息をつかれると多少なりとも凹みます(笑 しかし、その彼から一切溜息をつかれたことはありません。彼はいつも一生懸命にどれほど時間をかけてでも説明してくれ、理解しようと何回も聞いてくれます。そしてついでに正しい言い方も教えてくれる。とにかく親切でした。そして最近はbossと呼んでくれていました。そして、最近のメールではHi bossから始まり、最後はbrotherと。
その彼がいなくなってしまったのです。やはり寂しいですね。I miss youです。

ということですが、新しいパートナーが来ました。今度はドイツ人です。将にドイツ人という感じで、ゲラゲラ大声で話してパフォーマンスが豊かなのではなく、淡々とぼそぼそと喋ります。安定感がハンパ無い。しゃべり方とかメンタリティは多くの人が言うように、日本人と似ている気がします。特に抑揚無く、ぼそぼそ喋る感じ(笑
これからは彼とbrotherになれるようにがんばります。

さて、それからというと。本当のBrotherが来ました。Oxfordに。日本からの訪問者はとても久しぶりです。彼は海外旅行が趣味みたいなもんで、かなりの数の国を訪れていますが、イギリスは今回が初めてでした。まずロンドンに行って我々の旧友と過ごし、次にエディンバラに行って、そして最後にオックスフォードと。弾丸1週間の旅でした。

で、兄が来てるんだ、と皆に話した所。なんで仕事してるんだ?と何回も言われましてね。。。正直、「俺らの間柄なんだから、いーじゃん」って思っちゃうくらい(笑 こちらの人って家族は本当に大切にするので、家族が来たら仕事なんてしてる場合じゃないってことなのですかね。とにかく、ここに来るべきじゃない、一緒に彼といるべき、などshouldが多かったのには参りましたね。しかし、日本人だって家族を大切にしない訳ではないのですよ。大切です。しかし、それを大々的に表現するかというと、また別ですなんですがね。それが解ってくれないんですよねー、こちらの人。。。ま、仕方ないことです。

さて、そんな彼に私は何をしたかというと。まずは市内を案内。Oxfordの街自体は小さな街なので、一日中歩き回れば概要を掴むことは簡単です。その夜はSt. John's Collegeでディナー。今回のためにラボのガイに頼み込んでセッティングしてもらったのです。St. John's Collegeはそこまで凄い古いカレッジではないのですが、とてもお金持ちのカレッジの一つでしてね。とてもキレイでしたよ。食堂は白い壁で前に行ったMagdalene Collegeの雰囲気よりも明るく、年代が示す通りやや新しい感じです。しかし、それでも1555年創立ですけどね(汗 日本はその頃というと、、、戦国時代やんけ!!桶狭間の戦いの5年前か。。。いや、やはり考えるだけで桁違いです^^;

それでなんと、そのディナーを企画してくれた彼がちょうど誕生日だったこともあって、研究室の人のほとんどの人が参加するという大規模な物になりましてね。ワインも飲み(苦手な赤ワイン)、酔い(特にbrother)、非常にナイスな夜になったと思います。私の兄もご満悦だったことでしょう。しかし、英語で話し続けるということでかなり疲れたでしょうけど。。。ま、それは良い経験であったと勝手にそう思うことにします。

そして次の日は彼に回るべきカレッジを紹介して、昼間は仕事。夜はまたディナー。オックスフォードで見るべきカレッジとして、10くらいあげると、Magdalene, New, Christ Church, Marton, Balliol, St. John's, Trinity, Oriol, Exeter, Worcester ですかね。
こちらの学生の意見も入れてですよ。
で、彼のお気に入りはNew Collegeだったみたいです。ちなみに私まだ行っていない(汗
彼曰く、「ただ古いだけじゃない」だそうです。特にチャペルがいいと。よし、行くか。
だってNewですからね。いや、でもそのNew College、1379年創立です。。。恐れ入ります。。。

夜はラボ全体のディナーに参加です。JACSという業界トップレベルの雑誌にうちのエースの論文が掲載されまして、そのお祝いです。いやー、羨ましい。僕もそういう仕事をして日本に帰国したいものです。夢です。夢。JACS、うーん響きがいい。
それで、読者の皆様は知っている人がほとんどですが、私、双子なんですよね。だから、兄と言ってもわずか1分(笑 しかし兄は兄です。自然にそう思うようになって今まで来ました。
それで、ボスをびっくりさせようと、ジョークを企画しましてね。

レストランにまず兄が入る、ボスに挨拶する。話す。そして私が後から入店。
私が本当のYskだよー、という(笑 (くだらなすぎるwww)

という計画で、服もチェンジし、メガネもチェンジし、ベルトも全て。
ちなみに、これ、高校生の時は大成功しています(クラスを交換w 授業中にトイレに行く許可を3回とってもまったく気づかれずwww 先生も最後は笑うしかないwww)。
ということで、今回も余裕〜〜〜

さて、それで彼が入店します。彼が挨拶をしているのを外から見ます。
なぜか回りの皆さんが「Ysk!! Ysk!! Ysk!! Ysk!! Ysk!! Ysk!!」と私の名前を連呼しています。。。ん???
すると一人のガイが、「game over。。。」と。。。
ん???

なんと、そっこーでばれてしまったのです! おーのー><
なんということだ。。。まさかそんな。。。

しかも理由がすごかった。
Boss「俺の奥さんは一卵性双生児なんだよ。甘くみたな。鍛えてるんだぜ。へへへ。」
Ysk「なにー!!!!!それは想定外。。。」
Boss「すぐにピンと来たよ。」
Ysk「あちゃー><」

まさか、双子の奥さんを持っていたとは。それはさすがに想定外(汗
あっさりと見破られてしまった><

しかし、それからというもの、ディナーは大いに盛り上がって非常に楽しかったです。嬉しかったのはBossがとても気さくに兄に話しかけてくれたこと。酔ってはいましたが、兄にとってはとても嬉しい出来事だったのではないかと思います。

さて、兄の滞在も2日で終了。土曜日にヒースロー行きのバスが出るのを見送ってさよならです。その後「ちゃんとしっかり抱き合ってきた?」って聞かれましたが、そんな。。。ね(笑 

でも。良かったです。実は私、3週間ほど前に日本に一時帰国していたんですね。忙しい日程だったのでオープンにはしていませんでしたが。その時に久しぶりに兄弟げんかをやらかしまして。ま、私がぶっっっっちんしたんですが(汗
まぁたまには男同士のプライドがぶつかるんですよ。
その後、両親は不安だったらしく、大丈夫なのか、的な話をしてくれましたが。
結果は、なんということはない。いたって普通、です。
空気みたいな物、とこちらの人には説明しましたが、将にそうなんです。
全然わかってくれなかったけど。。。
なきゃだめ、でも、別に気にならない。つながりを特別、気にとめる必要もない。
極めて日本的な様ですが、あうん、なんです。

一緒に街を歩いて、特に話すこともない。お互いの近況のことを、少し。私は研究の有機合成の話、彼は仕事の医者の話。綺麗な景色を見て、うん、いい、とか頷く。黙って写真をとる。多少これからのことを話す。特に浮いた様子もなく。興味半分、聞き流し半分。町中にあるサンドイッチショップでパニーニを買う。美味い。一言を共有共感する。酔った、と言えば、あっそう、と重い荷物を手に取る。家に帰れば即寝る。
覚えていないし、考えたこともないけど、お互い街を歩いて話している時に、笑顔なんて無いんじゃないか。すごくドライな顔してると思う。ニコニコお互いに満面の笑顔で笑い合うなんて、ない。


彼はバスに乗る。
「じゃ。」
と振り返って右手を差し出す。
私はその手を取り、握る。そこで目が合う。1秒もない。しかし充分な時間。
お互い、にやり、として手をはなす。

バスが出る。
黒塗りの窓の奥、彼がどこにいるのかもわからず、私は彼に挙手敬礼する。
同じく、にやりとしながら。不覚にもうっすら目に涙を浮かべながら。

バスは行く。私は静かな気持ちで見送る。

イギリスらしくない良い天気だったな。
Brother、また来いよ。

0 件のコメント:

コメントを投稿