英国でポスドクをして大学教員になった若手研究者のブログ

ポスドクの研究留学日記的なブログ

2012年2月13日月曜日

そもそものはなし:① 行こうかな

ポスドクって?何でイギリス?と思う人もいるかと思う。
私は4月かD先生の下でお世話になる予定ですが、しばらくは、そこまで至る経緯を書いておこう。

私は博士課程2年の終わりに、多くの人と同じように就職活動をしようと考えていた。専門は有機合成だから、製薬会社や化学会社に勤めようかなとぼんやりと妄想していたと記憶している。薬を作るっていうのもなんか格好良く感じたし、もっと下世話に製薬会社に行った先輩が就職3年で家を購入とか聞いていて、すげーと思っていた。やっぱり金持ちって目指したくなる。就職3年くらいでみんな結婚とかできている様だったし、自分もそういう年頃かなって思っていた。(彼女がいなかったので本末転倒だが・・・)

一方、私はDC2という給料を学振(後で書きますね。)からいただくことが決まっており、博士課程3年が終わった時に、期限がもう一年残る状態だった。つまり、大学院を卒業しても1年はその学振から給料がもらえるのだ。
(会社に行ったらもらえませんよ。学術機関に残る場合のみです。)
そういう事情もあり、「海外の大学でポスドクやればいいじゃないか!」と現在の教授に言われたのが始まり。
酒を飲んだ席での話だったので(けっこう飲んでた・・・)、若干怪しげではあったが、あ、行けるんだ、その時に思った(不鮮明な記憶がある)。
大学の教員になることが夢だったし、その道に入っても良いんだ、と思った。
(紆余曲折があって大学教員を目指したけど、そのことも後ほどまとめて書こう。)

しかし、すんなり決めたわけではなかった。ポスドクやその先の厳しさを知っているから。ポスドク、一般的に広い意味で留学というとかなり聞こえが良いように思う。しかし現実はそんな生ぬるいものではない。これまでに何人のポスドクが研究室を転々として苦しい生活を余儀なくされて来たことか。。。いわゆるガチ契約社員なんですよ、ポスドクって。契約を切られたら即終了。まぢ、しゅ〜りょ〜って感じです。どこか働く場所を見つけなければならない。
様々な研究室を転々とした後に、良い大学のポスト(助教なり講師なり)や研究機関の研究職(理化学研究所など)に着ければ良いが、その門も非常に狭いもの。どこかの会社で中途採用で雇ってくれれば御の字とも聞く。定職につけない人がとても多くいるのです。
そのような状態ではローンを組めなかったりするし、給料は安いので家どころか結婚も厳しい。 ポスドクをやってサクセスロードを歩む人は決して多くない。それをぜひ、読者の人には理解してもらいたいと思う。(このことについてはまた後で)

話がそれました。つまりポスドクをやる以上、その先の安定な生活は望めないということ。それでもやっていく覚悟と自信があるのか、ということだった。

私の場合、自信は正直あまりなかった。少し、、、かな。
でも覚悟はあった。失敗してもいいや、という。人間らしい生活を送ることが難しくなったら、雇ってくれる所で掃除でも判子押しでも何でもやるさっていう、そういう覚悟。
そう思ったら調子にのるのが私の性格。
行けるところまで行ったらいーじゃん。完膚無きまで叩きのめされるまでやってやろうじゃん。
と、 極端に楽観的になる。

次にまたまた調子にのって、あろうことか強引に名誉教授(76歳)に相談してしまった。学会で捕まえていきなり相談したのだが。
今考えれば強引だったなと反省している。しかし、懐の深い名誉教授はゆったりと私の話を聞いて、将に長老的なご意見をくださった。

Bossが行ったらどうだと言ってるんだろう?じゃあ行きなさいよ。」

はい、としか言えない、何とも言えない雰囲気の漂う言葉だった。
これで決まったようなものだ。
その他、ポスドク以降の生き方についても相談したのだが、そのことについては後で書こう。

両親にも相談はしたが、案外すんなりとGoサインをくれた。母親はけっこう心配していたが、まぁどうにかなるでしょう、という鬼の楽観主義的な結論を出してくれた。

それで、行くか、となったわけです。
そう、たまには鬼の楽観主義も必要。

2 件のコメント:

  1. さすがM名誉教授ですね。あのお方も後先のことを考えず良い仕事をしてきたからあんなにすごい人になったんだとお聞きしたことがあります。先輩も有機化学者日本代表として本場イギリスでも大いに活躍できると思います。

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    1. ジルたんさん
      コメントありがとうございます。そうですね、牧師的な感じが漂っているのだけど、いわゆる「良い仕事」をしてきた方には間違いないでしょう。私が日本代表ということになるのは大変おこがましいですが、そういう自覚だけは心に秘めてやっていこうと思っています。ジルたんさんの活躍もきっと近いうちに耳にすることになるでしょう。

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