英国でポスドクをして大学教員になった若手研究者のブログ

ポスドクの研究留学日記的なブログ

2013年3月20日水曜日

Beethoven Piano Sonata No.26 "Les adieux"

こんにちは。友達からFBで点呼(?)があって(意味不明)、「はい!元気です!」って応答した翌日から風邪で死亡したYskです。汗

金曜日からおかしくなって、土曜日まで耐えたものの夜中に死亡、日曜日、昨日、今日と寝に寝て寝続けて、、、冬眠ならぬ春眠。爆
確かに暁を覚えないwww。←ばく
こんだけ寝てしまったらもう寝れません。ベッドの上で更新です。

さて、今回も音楽の話。最近多いなあ。病んでるのか。。。??笑
表題の通り、ベートーベン・ピアノソナタ・第26番「告別」です。

この街は出会いと別れの街です。毎年どれだけの人がここに移住し、どれだけの人がこの街を去って行くのでしょう。私も去年来たばかり。いずれはこの街を去らねばなりません。ん?去らないようではまずいですよ?^^; 仕事ちゃんとやって次の場所に移れるようじゃないと次が無いということですからね>< あー、こわっ。。。

私の話はさておき。日本の様に、別れの季節というのがある意味で無い、この街。毎月が出会いと別れの季節のようで、別れの挨拶というのも変な意味で慣れてしまいます。All the best for ※※とかI hope ※※とかそういう挨拶をして、ハグしてばいばい。日本の様に、皆さんの前でスピーチしてとか、涙を浮かべ、、、とか、そういう湿っぽいのはあまり無いんですね。最後にパーティして飲んで食べてまた飲んで、ついでに踊ってハグしてバイバイ。そんな感じです。

軽っ!笑

ま、それでも少〜しだけ、涙を見せる時もありますが。
でも、やっぱこちらは笑顔なんですよ。笑顔☆
そんなのも素敵ですよね^^

しかし、私、日本人ですから、やはり別れというものに何か特別な感情を抱いてしまいます。特に仲の良い人が去るとなると。
今月は、そんな親しき人がこの街を去りました。ちょー寂しくて、泣きそうでした。
っていうか、ガチで普通に泣きそうで、本当に最後の時は直接目を見て話せませんでしたわ。(T T)

涙もろいYsk(そろそろ30歳)。。。子供か!←

で、私、恥ずかしながら、その方にお別れの際、この曲を紹介したのです。
そう、このピアノソナタ第26番。

ご存じの方はもうご存じの「告別」です。
Wiki見ればすぐに出てくる話ですが、この曲、ベートーベンが自分で副題を付けた数少ない曲でして、それはこの告別の他に8番の「悲愴」しかありません。

この曲、3楽章構成でそれぞれの楽章に副題が付いています。

第一楽章「告別」
第二楽章「不在」
第三楽章「再会」

この曲、すごい好きなんですよね。現在でも先月書いた18番を一番聴いていますが、2年前くらいからこちらに来てから半年の1年以上はこの26番をかなり聴いていました。もうこの曲は物語性と心情描写が完璧なのです。そして非常に理解しやすい構成。

まずは第一楽章。「告別」。
もう最初の3つ下がる和音で落ちます。逝きます。早っ!
この3つの和音には珍しく歌詞がついており、「Lebewohl」(さようなら)と書かれています。このLebewohl。同僚のドイツ人に聞いたら、「これはね、もう生きては会えないかもしれない人に言うさよならだね」と教えられました。おー、切ないではないか(T T)
私的にこの3つの音をいかに表現するかで、好きなピアニストとそうじゃないピアニストが別れてしまいます。そのくらいこの3つの音たちは重要なんです。
独りよがりですが、私は1つ目の和音は痛烈な心に刺さる音であるのが好きで、思わず目を強くつぶり、ヒッと息を吸い込んでしまう様な痛みのある音が好みです。次は、痛い・・・うん、痛い・・・とその痛みをじっくりと感じる音。ゆっくり息を吐露しながら感じるように。最後は、痛みが襲い、それを感じ、そしてその上でゆっくりと静かに飲み込む感じの音が好きです。痛みを心の中に受け入れて仕舞い込むという感じ。特にこの3和音目の音色が大切です。ちょっと大人のというか酸いも甘いも解った老人にしか出ない音くらいの感じだと最高です。
 その3音の後は痛みを感じるスフォルツァンドが度々織り交ぜられながら、ゆっくりと曲が動き出し、悲しみのメロディーがやってきます。曲が動き出す前のゆったりとした悲しげな調べ、動き出した後の悲しみ耐えながらも苦しみもがく胸の内を表したような調べ、共に深く心に染みます。

そういう感じに聞こえるので、スキルのみを丸出しにしたテンポばかり速い演奏は好きになれません。やはり情緒豊かな音色と構成が好きですね。

第二楽章は「不在」。
なんでしょう。これは喪失感に尽きますね。いない。。。いない。。。いない。。。
この何とも「表現のしにくい」喪失感とか無力感とかが、見事に音の調べで「表現されて」います。はっきり言って、この不在という楽章。いちいち音色を付けて表現されていなくても良いと思います。むしろ、無色。音色無しで無気力くらいの方がしっくり来ます。疲れた感じで無気力というのではなくて、ぽっかりと心に穴が空いてしまってどうしようもない感情としての無気力です。その感じのまま曲は進行し、最後は天に祈るような、遠くの空を見るような感じで終わりに向かい・・・

切れ目無く続けて第三楽章。「再会」です。
ハッとする様なアルペジオから始まります。このアルペジオ、技術的に相当難しいと思いますが、極めて流れるように、期待が膨らんで階段を駆け上がっていく様に弾いて欲しいというのが私の理想です。やや子供じみた感情ですが。で、第一主題に入るのですが、ここはアルペジオとは打って変わって子供みたいな感じでは弾いて欲しくないですね。ウキウキした感じはアルペジオで終わり。そこから急に、大人のいい年した男になって欲しいです。何だろう、少し格好つけるというか、もったいぶった感じでちょっと粋でエレガントなおっさんの再会っていう感じ。男の感じで言えば、無駄に余裕をかもし出す、とか。とびきりの感情を抑えながら、無駄に堂々としてみる、みたいな。。。笑 Yskの好みに過ぎませんが、まぁ私の抱く感じはこんな感じです。 笑
意外に多いのが、この第三楽章を何か可愛らしく弾く方が多いということですね。うーん、どうしてもそれは、違うだろ、と思ってしまいます・・・すみません。><

それで、私。ベートーベン様にもの申す訳じゃないのですが、、、この全部の楽章を合わせて26番全体で「告別」と副題がつけられたとしても、26番全体としては告別と呼びたくありません。だって、告別って第一楽章だけじゃんって。少なくとも第三楽章は違うって思います。だから、全体としては、告別以外のタイトルを付けて欲しかったと思います。あー、ベートーベン様、すみません。><
どこかの話によれば、ベートーベンはこのフランス語のLes adieuxというタイトルに文句を付けたとも聞きます。LebewohlとLes adieuxは違うと。
Les adieuxはまた再会する人に向けて言う言葉なのでしょうか?私はフランス語は知りませんが。。。どなたか教えて下さると嬉しいです。
もし私の予想が正しいなら、Les adieuxでもいいか、ということに私的にはなりますか。。。しかし、ベートーベン様の意図とは違いますね><。。。しかししかし、やはり日本語の「告別」はやめてほしいですね。。。もっと良い言葉ないのかな。。。

さて、私の好きな演奏。もうこれは、絶対絶対ぜーーーったい、ルドルフ・ゼルキンです。彼の75歳バースデーコンサートのライブ演奏(@カーネギーホール)。もう、これを越える物は見つかっていません。まったくの個人的な好みですが、これ以外考えられません。第一楽章冒頭の3和音の音色、第一楽章全体の構成。第二楽章の無力感喪失感、祈る感じ。第三楽章の格好良さ。そして75歳とは思えない情熱。笑
完璧です。 ルドルフ・ゼルキン最高です!☆

第一楽章のみで言うと、バレンボイム、アシュケナージやオピッツ、アラウも好きですが特にアラウの第一楽章は良いと思います。オピッツは全体的にも良いです。。。が、全体を聞くと、、、やっぱゼルキンです。ずば抜けています。他にもシフ、ポリーニ、ブレンデル、バックハウス、グルダ、ギレリス、ルビンシュタイン、ケンプ、リヒテル、ギーゼキング(古っww!!)シュナーベル(古すぎっwww!!)、とか聞きましたが、やはり、彼です。
ルドルフ・ゼルキン。くどいぞ〜。←笑

嬉しいことに、ゼルキンの演奏は映像が見られますので、載せておきますね^^v
http://www.youtube.com/watch?v=aD8TWmNsLjA (第一楽章「告別」)
http://www.youtube.com/watch?NR=1&feature=endscreen&v=9SwvlEqyvXA (第三楽章「再会」)
(もちろんこのCDも売っています。)

あー、まぁたマニアックな話になってしまいまいた>< 読者の方、すみません。。。


本当はライブ音源じゃない26番(告別って言わないもんっ。だからLes adieuxって副題を紹介しなかった。笑)を紹介したかったのですが、やっぱりゼルキンになってしまいました。悩んで探した結果ですので、変に思わないでくれると良いですけどね。。。あ、っていうか、そこまでのこだわりは無いかっ><笑



親しき人よ。
別れとはいくつになっても辛いものだな。
今、私の心は空虚だ。言葉にならない。
でも、いつかまた再会できることを期待し、必ずまた会おうじゃないか。
どうか、お元気で。

Ysk


5 件のコメント:

  1. San DiegoのAshです。実は自分も留学してからまたクラシック熱が戻ってきましたねー。自分はチェロですが、すごくオケがやりたい!そして室内楽もやりたい!チェロはラフマニノフはピアコンも好きだけどチェロソナタもお薦めです。四楽章とか最高です。ええ、最高です。でも弾きこなすのは相当大変だろうなー。。。フォーレのピアノ四重奏ももう一度やりたいもんです。なまった自分がまた弾けるかは分かんないけれどもね。。。

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    1. どうも。おひさです。あーそうか、Ashさんはチェロだった。僕はあいにくチェロ自体には詳しくないので、探して聴いてみますか。ラフマニノフの2番のピアコンはすごいよね。僕はリヒテルのこの曲の演奏は名盤だと思います。チェロソナタも調べて自分なりの好みを開拓してみようかなー、と。こっちにいると、自分の世界に浸る時間って、音楽の時間くらいしか無いから。笑

      ちなみに、僕はもうちっとも弾けなくなっちゃったよ。。。まだ弾けるというのが羨ましい。

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  2. こんにちは。
    ラーメンもウィスキーも、入試のお話も、全部見てたんですけどね◎

    クラシックのなかで一番好きな曲ってありますか??
    一番って決められないものですか??

    私は!なんですけど、時々、ちょっとだけ浮気しても、やっぱりどうしてもベートーベンの悲愴の二楽章が好きって思うんですよね。悲しい曲って思ったことはなくって。どんな気持ちのときでも自然に入ってきて、気持ちと重なる曲が、クラシックだと、この悲愴で、それで、一番好きなんです。だから、聞く回数も一番多いし。わたしも昔、ピアノずっと習ってて、いまはもうどの曲もあまりうまく弾けないですけど、時々弾くときは、よく悲愴を、指が覚えてる範囲ですが弾いてます☆

    ベースは元気な曲が大好きなんですけど、それは、ベースそういう気分のときが多いからで、悲しい気分になりたくないから、悲しい曲は聞かないし。色んな抑揚のある曲とか、元気な曲とか、穏やかな曲とか、、、色んな曲ありますけど、この悲愴は、どんなときも一緒にいられて好きなんですよね!だから、クラシックでは、一番はこれだって思っています(^-^)わたしは。Yskさんはどおですか?

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    1. こんにちは。毎度ありがとうございます。
      うーん、、、非常に難しい質問ですね。笑 本当に困ってしまいます^^; 交響曲なら決められます。ベートーベンの5番「運命」です。特に第4楽章。有名な「ダダダダーン」の1楽章じゃなくて。勝利の音楽、4楽章です。これは自分の中の絶対です。特に3楽章が終わる1分前くらいからが好きですね。多くの人が言っているのですが、やはり私もこの5番は「完璧な交響曲」だと思います。それ以降、数々の作曲家が作る交響曲に影響を及ぼし、第5番というその数字に特別な意味が宿ることになった曲です。ちなみに、4楽章はハ長調で力強く、明るいですよ。^^

      ピアノ協奏曲はシューマンですね。1曲しかないのですが。イ短調です。しかし、短調でも非常に美しいです。春っぽさを感じるという人が私の周りには多いのですが、私は秋の美しさを感じます。良い曲でオススメできます。うーん、でもちょっと浮気をするなら、ラフマニノフの2番、ベートーベンの4番、メンデルスゾーンの1番と2番ですかね。。。これらもオススメですね。ごめんなさい、、、全然1曲じゃないですね。

      ピアノ曲は、、、もう本当に困ります。今しばらく天秤にかけてみましたが、非常に難しいです。。。でも、やはりベートーベンを選びますかね。。。時と共に変わってしまうんです。昔と今とでまったく違いますし。気分でも左右されます。もちろん、8番「悲愴」の2楽章は良いですよね。裏切りません。ベートーベンが祈る時に使ったという変イ長調。どんな時でも心が落ち着きを取り戻します。でも長く聞き続けると、3楽章が良いとも思います。いや、どっちも良い。。。笑

      さて、「今の自分」で選ぶとしたら。。。まったく有名じゃないですが、ベートーベンピアノソナタ第4番の第三、四楽章です。楽章の一部だけ切り取ると、ですが。全体で捉えるなら、、、ちょっとたくさんありすぎます。いずれもベートーベンのピアノソナタで、4番、7番、8番「悲愴」、13番「幻想曲風ソナタ」、15番「田園」、18番「狩」、26番「告別」、24番「テレーゼ」、29番「ハンマークラヴィーア」。あーん、ちょっとダメです。決められません><
      ベートーベンだけでこれですからね。。。やはりだめです。
      ごめんなさい(T T)死ぬまでに決めます!笑

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  3. あはは(^^)ほんとにいっぱいありますね 笑
    全体でとらえると、「運命」。素敵・・・と言いますか、ほんとに素晴らしいという印象です。なんというか、ほんとに抑揚がお上手というのかな、曲のなかで、何回も何回も、はっとしてしまうところがあります。なんて言うのか、ディズニーランドにいるときみたいな、スターウォーズのテーマ曲みたいな、なんていうか、引き込まれるみたいなのを感じています、わたしは。笑 

    わたしは、ここ数年だとバッハのチェンバロ協奏曲5番2楽章とか、管弦楽組曲第3番2楽章もずっと好きですしね。ちらほら浮気したり、ここ最近だと、ヘンデルのハープシコード組曲2集4番らへんに魅かれていまして。。。時々、ショパンにもちらほら。でも、なんでかいつも、悲愴にもどっていっている気がしています(^-^)でも基本的に好きな曲は自分でやりたいって思うので、練習しないとできないけど、やっぱり最後はピアノ曲全般が好きですね♪

    死ぬまでに決まるといいですねー笑
    色んなすてきな音楽に出会えるといいですよね(^^)
    わたしは、歌も習っていて(時々ドラム)、そちらに留学しても、歌は続けたいなって思っています。歌唱曲だったら、こういう歌い方が好きで、自分もこんなふうに歌えるようになりたいっていう理想があります。もし、歌唱曲?ボーカリスト?に関してもご意見あったら、ぜひお話してください☆

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