英国でポスドクをして大学教員になった若手研究者のブログ

ポスドクの研究留学日記的なブログ

2013年4月25日木曜日

小さな冒険

きちんと整理された心を持つ者にとっては、死は次の大いなる冒険にすぎない


 最近本で知った言葉です。非常に印象深く心に残りました。整理された心・・・深い。。。

さて、それはさておき、こんにちは。Yskです。今週は春の陽気がやって来て、穏やかなイギリスの春です。そろそろサンズアウトガンズアウトの季節ですね^^今回はこないだのエディンバラ旅行の番外編から行こうと思います。

僕は本当に旅が好きなんですよね。言わなくてもわかるって?^^;はは。しかし皆さんの旅の目的って何ですか?色々ありますよね。僕は大まかに言って4つです。その土地の歴史、文化、人間の観察。飲食(ご当地料理と酒)。自然(その土地特有の気候が織りなす美しさ、または凄さ)。そして偶然の出会い。前3つについては前回、なっっっっっがーく書かせていただきました。笑 今日は残りの偶然の出会いについてです。

僕は電車の旅を好みます。もちろん時間との兼ね合いですが。飛行機って何回も乗ると、もう楽しみはほとんどないんですよね。いくら機内食とか凝っていただいても、まあ所詮は機内食の域を出ない感じがします。雲の上を飛んでく様子とか太陽を見るのは好きですけどね。でも飽きる。笑 というと、飛行機にいちゃもんつけているだけになりそうですが、電車というより、僕は線路に何故か不思議な魅力を感じるんですよね。飛行機がたくさん並ぶ空港もかっこいいとは思うのですが、なんか「鉄道」って何か心を惹きつけるんですよね。そして、がったんごっとん行く時に見える景色を見るのも好き。どんどん変化していく様子が乙です。僕は鉄っちゃんじゃないけど、共感してくれる人、いるよねー??^^

そして、こちらに来て本当にいいな、と思うのが、その偶然の出会いです。いきなり日本語で喋りかけてくる車掌さん。まったく予想しない展開で話が弾みます。チケットを切りながら、私が知らない日本の話をしてくれたり。電車が遅れれば、ごめんなさーい、と日本式の謝り方をしてから、「正しい謝り方は?」とか聞いてきたり。電車が遅延したおかげで、隣に座っていたおじさんが話しかけてきたり。「もう本当に遅延が多すぎてこまったもんだ。怒っても仕方ないから諦めてるよ。疲れるだけだし。」とかそんなイギリス話を共感したり。

バーミンガムで乗り換えに困っていると、「大丈夫か?おまえ。」といきなり寄ってくるおじさん。「ダメ」というと、ちょっと来いって言われる。あー正確な場所に連れて行ってくれるんだって思ったら「はい、あそこの青いジャンパー着たおっさんに聞いてね!」って去っていく彼。笑 えっwwwちょっwww的な。笑 青ジャンパーのおっさんに聞けば早口で何を言ってるのか5%未満の理解。爆 終いにはプラットホームに並んでるおばさんのチケットを横からチラ見する始末。orz ま、色々ありますよね、旅って^^ それがまったくイライラせずに普通に楽しめる所が旅の心地よい部分なんだと思います。こんな偶然が好きなんです、私^^

ヨークでもう一度乗り換え。大きな時計を撮っていたら、「一緒に撮ってあげようか?」という窓口のお姉さんというにはちょっと苦しいおばさん。笑 異国人を奇異な目で見つめる金髪が美しいお嬢ちゃん。でも手を振って笑ってくれる。隣を見ればこちらも奇異な目で見つめる僕ちゃん。こちらから手を振って笑顔を作ると、今度はぷいっとそっぽを向かれる屈辱。笑

最初の電車が遅れたせいで次の電車の予約席を失い、ヨークからは出入り口に座り込む。これから3時間ここか、、、と溜息をつくも、窓から写真を撮りまくる。気がつくと向かいに同様に座っていたスコティッシュであろう女の子が(恐ろしく綺麗!)ウインクとスマイルをくれたが、急にちょっとどうしようもなくなって移動する情けない私。笑

この旅で最大の偶然の出会いは、ベーリック・アポン・ツイード(Berwick -upon-tweed)との出会いだ。車窓からしか見えなかったが、それだけで心を奪われる景観。ガイドブックにも載っていないスコットランド国境の小さな街。しかし、実に綺麗。ツイード川の河口の街で、海に近いその河口に美しい橋がかかっている。太陽の光を浴びた海とその橋、そして街の様子が調和していて一瞬で心を奪われる。調べてもとても少ない情報量のこの街。しかし、確実に魅力的である。次に北に向かう時は必ずここに立ち寄るんだ。こういう発見がたまらなく面白い。


僕が旅に期待しているのは、ちょっぴり冒険じみたことだという感覚がある。大きな壮大な冒険にはほど遠いが、しかし何か予想しないことを求めてわくわくしている。旅で見たメインの城や建築物、文化遺産や自然遺産、そして美味しい食事やお酒。それらよりも圧倒的に印象に残らず、そしてすぐに忘却の彼方へと消えてゆく、そういう小さな思い出たち。しかし、それを少なからず求めて旅に出る自分がいるのだ。そしてそんな旅の途中、私は必ずと言って良いほど五感が刺激されて敏感になっている。それらの刺激は普段というか日常では得られない快感を与える。そしてその快感は一抹の寂しさを伴った不思議な幸福をもたらす。

考えてみれば、というか、気がついていたけど、研究には旅に似るものが宿っている。日々新しい何かが起こり、それに一喜一憂する。(多くの場合は失敗の数々。。。それを確認するのだが。。。でも新しい。)ベッドに潜って翌日の仕事を考えれば、わずかなドキドキを覚える。本当にごくわずかなのだが。予想しない結果に、つい笑みがもれる。多くの場合は苦笑いなのだが。しかし、「ありえねー」と言って実は喜んでいる自分もいる。そんな日々の数々の記憶は、一つの仕事を達成した後には自然と印象を薄めていく。しかし、自分はしょうもない多くの場合失敗におわる出来事のほんの一部に、何か面白いことを期待し、わくわくしている。僕にとって研究は、有機合成という世界を旅する中での小さな小さな冒険なのだろう。(なんてストレスが貯まる旅だ!)そうやって楽しみながら研究生活を送りたいと思う。

と、ファンタジーを考えてみたけど、、、それよりもっとリアルな旅人にもなれるんだよな。ポスドクという旅人。笑 ははは。イギリスでしばらく時を過ごしたら僕はどこに行くんだろう。。。日本に帰る?アメリカでも行く?アメリカに行けたらその次は?ドイツやフランス等の欧州の他の国?成長著しい中国?莫大な国費をかけて世界中の研究者を国策で集めているシンガポール?

・・・でも。やっぱ日本だよなー。最終着地地点は。日本の化学教育に本当に微力でもいいから携わりたい。旅は旅だから楽しいのであって、旅が仕事じゃ苦しいよね。趣味は趣味だから楽しいのであって、趣味が仕事に完全に重なる場合は極めて希と考えるべきだろう。

じゃあ、いつ帰るのか・・・


今でしょ!!


・・・なんて上手く行くわけねー。笑 無理〜。笑

今年のうちにその辺も考えることとしよう。日々の小冒険を楽しみながら。

Yskの独り言でした。

 ベーリック・アポン・ツイード(Berwick -upon-tweed)の風景

2 件のコメント:

  1. 去年、"The Unlikely Pilgrimage of Harold Fry"という本を読んだら、まさにこのBerwick-upon-Tweedが出てきたよ。こんなにかわいい町なんだね。

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    1. くわこさん

      へー、そうなんだ。僕はその本の存在すら知らないし、英語なので読む気もないのですが(笑)でも、そのBerwickはとても良いところだと思うよ。外からしか見てないけど、本当にprettyという言葉が似合う町田と思った!

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